大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所那覇支部 昭和49年(う)69号 決定 1974年6月17日

被告人 奥間勝

主文

本件控訴を棄却する。

理由

まず、職権をもつて、控訴趣意書が刑訴法に定める方式に違反していないかどうかについて検討するに、弁護人知念幸栄作成名義の控訴趣意書によれば、

「第一点 原判決には事実誤認がある。

原判決は、被害者山城勇が準歩道に座つていたと認定しているが、その認定は誤りである。被害者は車道上に座つていたものであるから、右認定は誤りであるといわなければならない。

第二点 原判決は、量刑不当である。

原判決は、被告人を懲役一年六月に処する旨の言渡しをしているが、右言渡しは不当である。諸般の事情を考慮すれば、被告人に対し執行猶予の言渡しをするのが妥当であると思料する。」

との記載があるのみである。

ところで、刑訴法三八二条によれば、事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき誤認があることを信ずるに足りるものを援用しなければならないと規定されており、前記第一点のような記載では、同条に定める事実の援用があるということはできない。

また、同法三八一条によれば、刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて刑の量定が不当であることを信ずるに足りるものを援用しなければならないと規定されているが、前記第二点には何ら事実の援用がなされていない。

そうすると、本件控訴趣意書は、刑訴法に定める方式に違反しているというべきであり、しかも弁護人は被告人により選任された資格を有する弁護士であり、原審弁護人でもあることを併せ考えると、本件控訴は、控訴趣意書の方式違反を理由に、刑訴法三八六条一項二号により棄却するのが相当である。

よつて主文のとおり決定する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例